以下の論文を読んだので簡単にまとめます。
論文情報
タイトル:Control Barrier Functions: Theory and Applications
著者:Aaron D. Ames, Samuel Coogan, Magnus Egerstedt, Gennaro Notomista, Koushil Sreenath, Paulo Tabuada
所属:
・Aaron D. Ames:California Institute of Technology(Mechanical and Civil Engineering / Control and Dynamical Systems)
・Samuel Coogan:Georgia Institute of Technology(Electrical and Computer Engineering / Civil and Environmental Engineering)
・Magnus Egerstedt:Georgia Institute of Technology(Electrical and Computer Engineering)
・Gennaro Notomista:Georgia Institute of Technology(Institute for Robotics & Intelligent Machines)
・Koushil Sreenath:University of California, Berkeley(Mechanical Engineering)
・Paulo Tabuada:UCLA(Electrical and Computer Engineering)
公開日:2019/3/27
会議:18th European Control Conference (ECC 2019) dblp.org
arXiv: 1903.11199
要約
エグゼクティブサマリー(約10行)
- 本論文は「安全」を集合の前向き不変性として定式化し,Lyapunov 関数と双対な概念として Control Barrier Function (CBF) を体系化したチュートリアル兼サーベイ
- Nagumo の定理,barrier certificate,viability theory などの歴史的流れを整理しつつ,「入力あり系に対する安全証明」を CBF とまとめている
- 非線形アフィン系 に対し,安全集合 の前向き不変性と CBF 条件
が必要十分条件になることを示し,「安全な入力集合」 を導入する。 - 安定化のための Control Lyapunov Function (CLF) と,安全性のための CBF を同じ線形不等式制約として扱い,CLF–CBF を組み合わせた 二次計画問題(CLF–CBF QP) で「性能+安全」を同時に満たす枠組みを与える。
- 入力制約や高相対次数の安全制約(位置・距離制約など)に対応するため,Exponential CBF (ECBF) を導入し, という線形フィードバック型条件で高次制約にも対応する。
- CBF/ECBF 条件はいずれも「入力に対してアフィンな不等式」として書けるため,任意の名目制御(既存コントローラや RL ポリシー)を 最小限の修正 で安全化する「安全フィルタ」として実装できる。
- 応用として,二足歩行ロボットの飛び石歩行,自動車の ACC+車線維持,セグウェイ型ロボットのバランシング,マルチロボットの長時間自律(バッテリ制約+カバレッジタスク)など,複数のロボット・CPS 例に CBF が適用される。
- これらの例は,安全制約(衝突回避・姿勢制限・エネルギ制約など)を CBF として設計し,CLF–CBF(-ECBF) QP で「名目タスク+安全+入力制限」を同時に満たせることを示している。
- 本論文以降,ロボティクス・自動運転・マルチロボットなど多くの分野で CBF ベースの安全制御が標準ツールとなり,安全クリティカル制御の文献で頻繁に引用される基準文献となっている。(annualreviews.org)
- 論文情報と位置づけ
- タイトル:Control Barrier Functions: Theory and Applications
- 著者:Ames, Coogan, Egerstedt, Notomista, Sreenath, Tabuada
- 位置づけ
- 2010年代に散在していた「制御バリア関数(Control Barrier Function)」とそのロボット応用を,体系的に整理したチュートリアル論文
- 「安全クリティカル制御(Safety–Critical Control)」の標準的な入門・総説として,後続のサーベイ・教科書・応用論文から広く引用されている
- 著者チームの背景
- Ames + Tabuada
- 非線形制御,サイバーフィジカルシステム,CLF–CBF–QP による「安全フィルタ」の枠組みを構築してきた中心人物
- Sreenath
- 二足歩行ロボットなどのダイナミックロボットで CBF を実機に適用,Exponential CBF など相対次数の高い制約を扱う理論も展開
- Egerstedt + Notomista
- マルチロボット・長時間自律・エネルギ制約などを CBF で扱う応用系を推進
- Coogan
- 形式手法(時相論理)と安全制御,交通ネットワークなどのサイバーフィジカルシステム
- → 理論(集合不変性・CPS)とロボット応用(歩行,自動車,マルチロボット)が一つのストーリーで繋がっている構成
- Ames + Tabuada
- バリア関数の歴史的背景(Brief History of Barrier Functions)
- Nagumo の定理(入力なし系)1940年代
- 系:,安全集合:
- 境界 上で が成り立つことと,(C) の前向き不変性が同値
- Barrier certificate(unsafe 集合に対する証明書)2000年代
- unsafe 集合 (C_u) に対し,関数 (B) が
- 初期集合で ,unsafe 集合で
- ダイナミクスに沿って
を満たせば,軌道は unsafe 集合に到達しない(安全)
- (B=-h) と置くと,Nagumo 条件 と対応
- unsafe 集合 (C_u) に対し,関数 (B) が
- Barrier Lyapunov function
- Lyapunov 関数のように「集合全体で 」を課す枠組み
- すべてのレベル集合が不変になってしまい,安全性のためには過剰に保守的
- Viability theory(制御入力ありへの拡張)
- 入力あり系で「制御不変集合(controlled invariant set)」の概念
- 何らかの入力選択により,集合 に永続的に留まれること
- 初期の control barrier function
- 条件: s.t. で 不変,など
- 依然として保守的で,必要十分な条件になっていない
- Nagumo の定理(入力なし系)1940年代
- 現代的 Control Barrier Function の基礎(FOUNDATIONS OF CONTROL BARRIER FUNCTIONS)
- セットアップ
- 非線形アフィン制御系:
- 安全集合:,安全とは が前向き不変なこと
- CLF と CBF の対比
- CLF
- 正定関数 (V) に対し, を満たす (V) を Control Lyapunov Function と定義
- サブレベル集合 が不変 → 原点漸近安定
- 問題点
- CLF を安全集合にそのまま使うと,「全サブレベル集合が不変」になり安全のためには保守的
- 必要なのは「超レベル集合 だけが不変」でよい
- CLF
- モダンな CBF の定義(相対次数 1 の場合)
- 拡張クラス 関数 を用いて を満たす h を CBF と定義
- 同値に
- 境界 では (Nagumo),内部では「ある程度の減少は許す」形
- 安全な入力集合
-
安全入力集合
-
任意の Lipschitz 連続な (x) を選べば, は前向き不変かつ集合として漸近安定(Theorem 2)
-
- 必要十分性(Theorem 3)
- ある制御則で が安全(前向き不変)なら,その C に対して CBF が存在する
- CBF は安全性に対して「必要かつ十分」な条件になっている
- セットアップ
- 最適化に基づく制御(Optimization Based Control)
- 目的:名目制御則 を「最小限だけ修正して」安全にする
- CBF-QP(名目制御からの修正)
- 目的関数:
- 制約:CBF 条件
- 解釈
- CBF 制約が満たされていれば
- 危険なときのみ,「半空間への直交射影」として (u) を最小限に修正
- CLF と CBF の統合(CLF-CBF QP)
- 変数:(CLF 緩和)
- 目的
- 制約
- CLF:
- CBF:
- 安全性(CBF)はハード制約,安定性(CLF)はソフト制約として扱う枠組み
- 高相対次数制約と Exponential CBF(Exponential Control Barrier Functions)
- 相対次数 の安全制約
- 多くのロボット位置制約(距離制約など)は入力に対して相対次数 2 以上
- 例:Manipulator の先端位置,車両の位置など
- 拡大状態と仮想入力
- とおき, を仮想入力 とみなすことで という線形チェーン積分器に落とす
- Exponential CBF の条件
- 線形フィードバック (\mu=-K_\alpha\eta_b) に対し, を満たす制御入力が常に選択可能なら, が保証される → を指数的に保つ
- 相対次数 1 の場合は通常の CBF に帰着(Remark)
- CLF-ECBF QP
- 変数:(u,\mu,\delta)
- 制約
- CLF
- 定義式:
- ECBF:
- 高相対次数制約を CLF-CBF QP と同じ形式で扱える
- 相対次数 の安全制約
- ロボット応用(APPLICATIONS: CBFS FOR ROBOTIC SYSTEMS)
- 共通の枠組み
- 非線形ロボットダイナミクス + 名目制御(CLF, PID, 既存のコントローラなど)
- 安全制約(衝突回避,車間距離,姿勢制限,バッテリ残量など)を CBF/ECBF で定式化
- CLF-CBF-QP(または CLF-ECBF QP)として
「性能(安定性)+安全性+入力制約」を一括で扱う
- V-A Dynamic Walking on Stepping Stones
- 二足ロボットの飛び石歩行
- HZD+CLF で周期歩行を安定化し,
スイング脚の足位置に対し 2 つの ECBF を設計(外側円の内側・内側円の外側) - CLF-ECBF QP により,「必ず飛び石上に着地」しつつ動的歩行
- V-B Automotive Systems: ACC and Lane Keeping
- 自動車の追従(ACC)+車線維持の同時制御
- 前方車両との車間距離から CBF(タイムヘッドウェイ制約),車線からの横ずれ・横速度から CBF(車線逸脱防止)
- CLF で速度追従や目標経路追従を表現し,QP で統合
- V-C Dynamic Balancing on Segways
- セグウェイ型ロボットに対し,任意の名目制御を「安全フィルタ(ASIF)」でラップ
- Hamilton–Jacobi による安全集合の近似から CBF を構成し,
s.t. CBF で転倒防止
- V-D Long Duration Autonomy(マルチロボット)
- 長時間動作するマルチロボットでのエネルギ制約+タスク(環境モニタリング)
- 各ロボットのバッテリ残量 (E_i) と充電ステーションまでの必要エネルギ から などの CBF を構成し,「いつでも戻れるエネルギを維持」しつつカバレッジタスクを遂行
- 共通の枠組み
- この論文の「論点」と意義
- 安全性を「集合の不変性」として捉え直し,
- Nagumo → barrier certificate → viability → control barrier function
という歴史的流れを整理
- Nagumo → barrier certificate → viability → control barrier function
- Control Lyapunov Function に対して,Control Barrier Function を「安全性版の双対物」として位置付け
- CLF と CBF を同じ二次計画問題(QP)の線形不等式制約として扱うことで,
- 名目制御を「最小限に修正する安全フィルタ」
- 安定性(性能)と安全性を同時に扱う一般的なフレームワーク
を提示
- 高相対次数の安全制約を Exponential CBF として扱い,ロボットの位置制約(衝突回避,着地位置制御など)までカバー
- 歩行ロボット,自動車,セグウェイ,マルチロボットなど複数の実機応用で,
CLF-CBF(-ECBF)-QP が汎用的に機能することを示し,
「安全クリティカル制御の標準的な設計手法」としての位置づけを確立している
- 安全性を「集合の不変性」として捉え直し,
一言メモ
- 理論と応用を当時(2019年頃)の研究潮流をまとめている
- わかりやすく書かれているのでCBFの理解の助けになった
内容メモ