周りの友人を観察したり、YouTubeで有名人の意見を見たりしていると、どうしてここまで思慮深さや発言の深さに差が出るのだろうといつも不思議に思います。
たとえば友人との何気ない会話の中でも、発言の浅はかさにあきれたり、逆に思慮深さに感嘆したりと、コミュニケーションの随所でこの違いを感じることが多いです。こういった思慮深さが、日々の情報収集・整理・発信の質に依拠していることは明らかで、日常で多くの情報に触れ、自分の中で噛み砕き、わかりやすく発信するという情報処理を日常的にできる人は、当然ながら思考も深まります。
大学生までは授業があり、ノートを取り、レポートを書かせることで、たとえ何も考えずのうのうと生活していても情報収集のフローは受動的に与えられていたとは思いますが提供されます。しかし、学部を卒業したあとはそうはいかず、大学院でも社会人でも、能動的に情報を取りにいくことが必須になります。
ここでは、信頼できる情報を収集し、体系的にまとめ、質の高いアウトプットにつなげる方法について考えてみようとおもいます。
Summary
- 情報のInput 整理 Outputを体系的に行う必要がある。
- 情報の多様性と信頼性のトレードオフから情報収集を考える
- アウトプットを意識しながら情報を整理する
- Zettelkasten+Obsidian運用では時系列ベースの俯瞰と素早いリンクづくりが鍵。
情報の多様性と信頼性のトレードオフから情報収集を考える
まず、情報収集のチャネルから考えてみたいと思います。なるべく多様でかつ正確な情報を取ってきたいという目的を考えて、思いつくだけの情報収集のチャネルを挙げてみます。
- ニュース
- 大手新聞社
- 無料ニュースサイト
- etc…
- SNS
- X
- LinkdIn
- YouTube
- etc…
- 論文系
- ArXive
- カンファレンスのサイト
- ジャーナル
- 企業、官公庁、公式サイト
- OpenAIの公式サイト
- 経産省の公式サイト
- etc…
- ブログ記事・ブログ共有サイト
- zenn.dev
- note.com
- 個人ブログ
- etc..
- LLM
- 各種AIサービス
- 人との交流
- 特定のコミュニティ
- 食事会などでのコミュニケーション
それぞれ信頼度と情報探索の可能性はトレードオフにあります。例えばXならリアルタイム性と探索性は高い反面、ファクトチェックなしでは誤情報に気をつける必要があります。一方で官公庁の公式サイトなどは資料の正確性・信頼性は高いものの、欲しい情報に辿り着くまで大変です。
現在はWeb検索やLLMのおかげで一次情報にたどり着く手段が増え、効率的に情報の精度確認ができるようになりました。よって、まず探索を広く行い、候補が集まった段階で原典確認や複数ソース照合に切り替えるほうが全体の効率は良いと感じています。
僕の場合は、以下の4つから情報を得ています。
- X:
- 特定の数人の情報発信者やインフルエンサーをリストに入れて観察しています。たとえばAI系だとPFNの岡野原大輔さんなど信頼できる情報源を中心にしています。
- 投稿の真偽が曖昧な場合は、本文リンクや出典をたどり、一次資料が見つからなければメモ段階で保留フラグを立てています。
- NHKのニュースサイト:
- 正確性を担保しながら世間全体のニュースを手っ取り早く眺めるのには必要十分だと思います。1
- LLM:
- 僕の場合はChatGPTですが、最近のとくにGPT5以降は、ハルシネーション耐性の性能が上がり、Web検索の性能も向上しているので実用レベルになっています
- いくつかの特定の共有サイトのクローリングと情報重要度のラベリング、特定のキーワードの検索などを走らせて情報のキャッチアップをしています
- 人との交流:
- 情報のランダム性を上げるため、バックグラウンドの違う人との会食やオンラインイベントを定期的に予定に入れて、会話のメモをアイテム化しています。
特に運用面でXとLLMに関しては必ず原典を当たるようにしています。探索の面で2つとも優秀ですが、それ単体で信頼するにはリスクが高いので、裏とりのフェーズを必ず設けています
毎日以上のチャネルを見ておけばさすがに一般常識+alphaの知識は得られてると信じてます。
アウトプットを意識しながら情報を整理する
次に情報の整理についても考えてみます。
僕の手法はObsidianというメモツールを使ってZettelkastenの考え方を活用した方法で管理しているので、少し特殊かもしれません。
ObsidianとZettelkastenについての補足
Obsidianはローカル志向のMarkdownベースのメモツールで、文書間リンクが強力です。ローカル版のNotionというと簡単かもしれません。また、ローカル志向なのでLLMとの接続もスムーズでClaude Codeが出てきたあたりからまた脚光を浴びるようになりました。
Zettlekastenについてですが、これは文書の整理手法の一つです。「つぇってるかすてん」と読んで、ドイツ語でメモの箱みたいな名前らしいです。ものすごいスピードで論文を書いていたらしいドイツの社会学者が開発した知識管理手法らしいです。カード同士のリンクと文献管理を徹底することで大量のアウトプットが可能になるとの噂です。2
この2つはメモのリンクという意味でObsidianとの相性がよく、Obsidianでのメモ管理術のベストプラクティスとして名前が上がることが多いです。
まず情報の整理について考えようとしたときに、その目的から考えたほうが得策かもしれません。僕の場合は大上段の目的に「ブログを書く過程で自分の見識を広め考えを整理し深める」というものがあり、情報の整理はブログを書くための手段という位置づけをしています。何も目的を持たず整理することが自己目的化してしまうと継続的に情報の収集をする目的がなくなるのであまりおすすめはしません。
上記の目的を考えてみると、ブログがまずあり、そこでまとめやすいように情報を整理する必要があります。ブログの形態としては一週間に一回のSprintと、一ヶ月に一回のテーマレポートを書いているので、その要件としては、時系列を追いながら一覧で情報を整理できることです。
具体的な情報の一覧のフォーマットとしては、一週間ごとに以下のような形でまとめています。
### [リンクタイトル](URL)
**内容**:
**私見**:
**日付**:
**スプリント**:[[2025-10-Sprint4]]
よくある情報整理のミスとして、情報の種類に基づいて分類してしまうという点があります。どういうことかというと、例えばニュースをロボット系やAI系といったカテゴリでタグ付けしてノートにまとめていたとしましょう。特定ジャンルに限定して集めるなら機能しますが、網羅的に情報を集める場合は排他的なタグ付けはほぼ不可能です。例を挙げると、ロボットとAIのどちらとも言えない記事が出てきたときにタグが決まらず迷い続けます。つまり、迷わないようにすべてのタグを用意すればタグの数は膨大になりますし、そもそもタグをつけるという行為自体が認知負荷になります。僕の場合はタグで分類するよりも、時系列や仮説との関連づけを優先しています。
具体的なフローです。
- 情報を毎日定期収集する
- 収集した情報をitemsフォルダににDataview一つのエントリとしてぶち込む
- 一週間ごとに今週集まった記事をまとめてSprintを作成する。それぞれの情報は互いにリンクさせる
- Sprintを見ながらぼんやりとした仮説やアイデアをIdeasフォルダにまとめる
- 一ヶ月ごとにアイデアを深堀りして、テーマレポートを作成します
/
├─ _Templates/
├─ 01_Items/ # 全情報を items.md に一括管理
├─ 02_Sprints/ # 週次レポート
├─ 03_Ideas/ # アイデア、仮説
├─ 04_Topics/ # テーマに沿ったトピック
└─ 99_Archive/ # 過去の記事
上記を繰り返していくとアイデアフォルダに大量のレポートのなり損ないが発生するので、定期的に振り返りの時間を確保し、不要なものは容赦なく掃除します。
LLMを活用しながら良質なアウトプットを生成する
最後にアウトプットの方法ですが、これは上記説明した通りで、Ideasに溜まった仮説を重要だと思うものから順にブログにしていきます。
アウトプットは普通に調べて、実験して検証しながら書くだけなのでシンプルではありますが、生成AIの利用はうまく活用できるところはしたいです。特に以下の点では役立っています。
- Fact Check:
- 最近のLLMは検索を併用できるようになり、一次情報を探す補助としては実用レベルになっていると思います。
- ただ、それだけだと確証バイアスになりがちなのでこれが違うと仮定したときの情報も検索させると良いと思います
- 文章表現の校正:
- 内容そのものは自分で書きますが、英語表現や構成の微修正はAIに提案させています
- とはいえ、最近AIで書いたことがまるわかりのやたら無駄な情報が多い記事が多く、最終的には文章が下手になってでもある程度自分の文章を書くようにしています。
まとめ
Abstract
情報源の探索と裏取りを分けて設計し、時系列ドリブンな整理と定期的な棚卸しを通じて思考の深さを育てる。生成AIは探索・校正の補助として活用しつつ、判断と最終アウトプットは人間が担う、という線引きを意識したい。